酒米/酒造好適米:八反:雄町:八反錦:千本錦
広島の酒造り 酒米
銘醸地には、必ずいい酒米がある。
日本酒と米、そして水は切っても切れない関係がある。銘醸地と言われるところには必ず酒米の産地がある。杜氏は、酒米の品種によって、どんな酒を造るのか決める、というほどです。
いい酒、おいしい酒を造るためには、まずいい酒米があることは絶対条件。うまい酒に巡り会うには、酒米のことを知っておくことも必要です。
酒造りに適した米のことを「酒造好適米」という。読んで字のごとく「酒造りに好く適した米」といい、酒造好適米は、いわゆる「飯米」とは違いがあります。
見た目にも、違いがあります。大粒で、米の中央部分に「心白」といわれる白い不透明な部分があるのが特徴です。また酒米は一般に稲の丈が高く、粒が大きく穂が重い。だから倒れやすく、病害虫にも弱いとされています。肥料のやり方にも品質が微妙に左右されて、普通の米よりも栽培が難しいとされています。
そんなことから、広島県での酒米の作付面積は全体の約5%ほどです。比婆郡比和町や高田郡高宮町、三次市、双三郡三和町、東広島市で栽培されているが、酒米は貴重な米なのです。
酒米は、「心白」の部分を残しながら、米の表面を削り落として磨きをかける。これが「精米」です。
つまり、米の真ん中の一番いいところを使うのです。普通酒の精米の割合(精米歩合)が70%程度、それが60%以下だと吟醸酒に、大吟醸だと50%~30%になります。米の表面を削るのは、タンパク質や脂肪分を取り除いて、でんぷんの割合を多くする為です。一般の食用米は91%の精米割合だから、いかに酒米は米の表面を削り取るかが分かります。
全国的に有名な酒米は、その作付面積の多いものでいくと、「五百万石」や「山田錦」「美山錦」「兵庫北錦」、そして広島の「八反錦」もそこに入ります。東日本の「五百万石」、「山田錦」は灘という具合に、酒の産地にそれぞれ代表する酒米があります。
広島で古くから栽培されてきた酒米は、「八反」と「雄町」。そこから品種改良などを経て、品種の広がりを経ながら今に至っています。一般にはあまり馴染みがないかもしれませんが、それらは広島が全国に誇る、評価の高い酒造好適米なのです。
広島を代表する「八反錦」。
「八反」が生まれたのは明治時代。民間の育成家だった、大多和柳祐氏が最初に手がけて、明治8年に育成したとされています。
それから「八反」は研究を重ねて年を経るごとに品種改良も成された。大正10年に「八反10号」、昭和35年には「八反35号」が育成された。そして40年には「八反40号」が誕生。それから19年経って、全国に名を馳せることになる「八反錦」が、新しい品種として登場したのです。
「八反錦」は、今の広島県の酒米面積のうち、約90%を占める割合で栽培されている。「八反」の弱点だった栽培の困難性を改善して、広く普及することになった。広島酒米を代表する品種として、県内はもとより、全国各地から引き合いがある人気品種となりました。
広島ならではの新品種「千本錦」。
そして今、広島の新しい酒米として大きな注目と期待を集めているのが、酒米「千本錦」です。
これは、大吟醸酒の酒米として全国的に知られる兵庫の「山田錦」と広島の飯米・酒米として人気の高い「中生新千本」を掛け合わせてできた広島オリジナルの新品種なのです。
「千本錦」は大吟醸酒に適した米で、タンパク質の含有量は山田錦よりも低く、アミノ酸度が低いために、酒がすっきりした味わいになる。平成12年に広島で本格的な生産を開始したが、造りの側からも「扱いやすい」と高い評価を得ているようです。
広島の酒を見ると、ラベルに「千本錦」と貼ってあるものを見た人も多いと思います。広島オリジナルの、そして広島の気候風土に適した酒米を、との思いから生まれたのが、この「千本錦」です。原料米に用いた広島の酒も多く出始め、その味わいとともに、これからが楽しみな酒米です。